令和5年5月に広島で先進国首脳会議(G7サミット)が開催されたことは記憶に新しいところです。
今回は、日本・アメリカ・オーストラリア・インド4か国の枠組み(クアッド)の首脳会談が、サミット開催中5月20日の夜、G7サミットメイン会場である広島市内のホテルで開催されたことに注目します。
この首脳会談は当初、5月24日にオーストラリアで開催予定でした。ところが、直前になってアメリカのバイデン大統領が、アメリカ国内問題に対処する為、サミット後にオーストラリアなどを訪問する予定をキャンセルし、そのまま帰国すると表明しました。これを受けてオーストラリアは、オーストラリア内でのクアッド首脳会談の開催を断念すると日本側に通達してきました。その一方で、オーストラリアはクアッドそのものについて、「大変重要だ」と開催を強く熱望してきたのでした。
各国の思惑が入り乱れて一時は収拾がつかず、このままでは空中分解になる恐れもありました。開催日程や場所など、いつどこで決定されることになるのでしょうか。重要な会談が延期になるだけでも、インド太平洋地域の安全や経済が不安定なものになりかねません。
そう考えた日本は、4か国の首脳が広島に滞在しているサミット中に会談を行えないか、各国と急きょ協議し開催を模索しました。そして、時間や場所、その他あらゆる条件をクリアして、20日の広島での実現にこぎつけたのでした。
この点について、日本のマスコミはあまり報道していませんが、短い期間で各国の意向や状況を考慮し、合意を得ながら準備を整えるのは並大抵なことではありません。急転直下ともいえるサミット中のクアッド開催は、各国から「日本でなければ実現できなかった」との声も聞かれたほどの大きな評価を得たのでした。
この会談では、インド太平洋における力や威圧には強く反対していくことを明確に打ち出し、同時に南アジアの新興国や途上国の声を聞き、協力を推し進めていくことで合意しました。このクアッドは日本が中心となって各国を取りまとめ、4人の首脳は来年インドで会談を開催すると約束し、共同声明を発表するに至ったのでした。